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内科

早期大腸がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)について

内科,医療・健康情報2020.06.25

早期発見された胃・食道、大腸がんなどは身体への負担が少ない内視鏡 (ポリペクトミーや内視鏡的粘膜切除術;EMR)によって切除していますが、これらには切除できる範囲に制限があり、数回に分けてがんを切除するか、外科手術でおなかを切って切除しなければいけないケースも多々ありました。
しかし近年は内視鏡技術が大きく進歩し、従来の内視鏡治療では切除できず外科手術によって切除していたがんも一定の深さや大きさであれば粘膜下層剥離術(ESD)という方法の内視鏡治療で切除できるケースが増えました。

大腸がんの内視鏡治療

従来より行われてきたポリペクトミーや内視鏡的粘膜切除術(EMR)に続く第三の内視鏡治療として開発されたのが「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」です。

従来の手法

ポリペクトミー

くびれのあるポリープの切除に対して有効な治療法です。

内視鏡的粘膜切除術(EMR)

小さな粘膜内にとどまっているがんに対して行う治療法です。

第三の内視鏡治療

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、これまで外科手術等で切除しなければいけなかった大きな病変に対しても、一定の大きさ・深さのがんであれば、内視鏡で取り除くことができる治療法で、身体への負担を抑えて治療することができます。例えば肛門近くにできた大腸がんの場合、がんの進行度によっては外科手術で切除したのち人工肛門の増設を必要とする場合もありますが、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)で切除することができれば人工肛門を回避できる可能性もあり、外科手術に比べて入院期間も短縮できるといったメリットが期待できます。
ただし、大腸の壁は非常に薄く、従来の内視鏡による治療法に比べて出血や穴が開く(穿孔)リスクが高いので、高度な技術と経験が必要になります。また、大腸の粘膜下層剥離術(ESD)を保険診療で行うには、粘膜下層剥離術(ESD)の実績や緊急手術の体制が整っていることなど、厚生労働省より定められている施設認定基準を満たした施設でのみ行うことができます。
※富山西総合病院で
は2020年6月に承認済

治療方法

まず内視鏡で粘膜表面に拡がっているがんの切除範囲を確定します。病変周囲にマーキングを行い、専用の液体を注入して病変を浮かせます。粘膜の下にある粘膜下層の繊維や血管を確認しながら少しずつはがし、がんを粘膜ごと切除します。


 

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どんな病変に対してもESDが最良の治療ではなく、腫瘍の形状などによってはポリペクトミーやEMR、または外科手術が適している場合もあります。患者さんの状態などをしっかりと把握したうえで治療法を選択していきます。

大腸の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の保険適応について

厚生労働省からの施設基準受理によって、当院では2020年7月1日より大腸の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を保険適用で受けていただけるようになりました。

(参考)大腸がんについて

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の対象

リンパ節転移の可能性が極めて少ない早期がんです。粘膜内や粘膜下層の上方にとどまるがんの多くが、ESDの適応(対象)となっています。ただし、小さくても粘膜下層より深く浸潤が及ぶものなどはESD適応外となり、外科手術の適応になります。

担当医師より

がんの疑いを指摘された方はどのような治療をすべきか大変不安かと思います。大腸がんをはじめとする消化器がんの内視鏡治療を受けられるかどうか不明な場合はもちろんのこと、外科の医師とも連携を図りながら一人ひとりに適した治療法をご提供してまいります。些細なことでもお気軽にご相談下さい。

吉田 啓紀
【内科、消化器内科】