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慢性腎臓病について

慢性腎臓病とは

腎機能の低下や腎障害を示す所見が慢性的に続く状態を慢性腎臓病(CKD)といいますが、この状態を放置し腎機能が低下し続けると末期腎不全となり、人工透析や腎移植などの腎代替療法が必要となります。慢性腎臓病の初期段階では症状が無いため発症に気付かないケースも多いですが、腎機能がある程度低下すると元の状態には戻れないため異常の早期発見が大切です。

慢性腎臓病の社会的認知度はそれほど高くないですが、成人の8人に1人が罹患しているといわれるほど患者数が増加しており、誰でもかかりうる病気です。生活習慣病やメタボリックシンドロームとも関係が深く、心筋梗塞や脳卒中など血管疾患の発症リスクも高くなるため、生活習慣病とあわせて注意しましょう。

腎機能について

腎臓は主に5つの働きをしています。

老廃物の除去

血液をろ過して老廃物や余分な水分を取り除き、尿として排出する

血圧の調整

塩分と水分の排出量をコントロールし、血圧を調整する

血液をつくる働きを助ける

血液を作り出すよう骨髄に働きかけるホルモンを分泌する

体内環境の調整

体液量やイオンバランスを調整し、体に必要なミネラルを体内に取り込む

強い骨をつくる 

ビタミンDを活性化し、カルシウム吸収を促し、骨を丈夫にする

腎機能が低下すると上記の働きが阻害され、そのまま放置し続けると腎臓がほとんど機能しない末期腎不全の状態になります。

ステージ分類

慢性腎臓病は、

  • 尿や血液検査、画像診断、病理診断で腎臓の異常が明らかである
  • 腎臓の働きをみる検査で糸球体ろ過量(GFR)が「60ml/分/1.73㎡未満」である

上記のいずれか、もしくは両方が3か月以上続く状態をいいます。

条件を満たした方の中には、症状が出ていない軽度の方から腎代替療法が必要な末期腎不全の方まで、重症度はさまざまです。そのため、原因疾患、糸球体ろ過量(GFR)や尿蛋白、尿アルブミン量の数値など複数の観点から重症度を決定し、それを参考に治療を行っていきます。

症状

慢性腎臓病がある程度まで進行すると、以下のような症状がみられます。

  • 夜間の尿が増える
  • 貧血や立ちくらみを起こしやすくなる
  • 手足がむくみ、靴や指輪がきつくなる
  • 息切れ
  • だるさなど疲労感を感じる

症状がでた頃には腎機能は相当低下していると考えられ、そのまま低下し続けると吐き気や食欲不振、かゆみ、呼吸困難、高血圧のほか、心不全、肺水腫など命に関わる合併症も併発する可能性があります。

原因

腎臓の働きを低下させる全ての要因が慢性腎臓病の原因となります。例えば、

  • 腎臓の病気(糖尿病性腎症、腎硬化症、慢性糸球体腎炎など)
  • 加齢による腎機能低下
  • 高血圧や糖尿病などの生活習慣病

などが挙げられます。

治療

慢性腎臓病は治癒が難しい病気のため、少しでも病気の進行スピードを遅らせることが重要なポイントとなります。そのために、腎臓の状態や腎機能低下の原因疾患を把握し、総合的に判断しながら治療を行います。

薬物療法

慢性腎臓病は対症療法が基本のため、原因疾患や現れている症状にあわせて薬を使用し症状を和らげていきます。糖尿病や高血圧、脂質異常症など原因疾患の治療薬のほか、むくみや貧血、代謝異常、高カリウム血症など症状に合わせた薬を用いて対応します。

食事療法

腎機能が低下している状態で通常時と同じ働きをさせると、十分に老廃物が排出されなかったり、更なる腎機能の低下につながる恐れがあります。そのため、タンパク質や塩分の制限といった食事制限を行い、腎臓への負担を軽減する必要があります。原因疾患や腎臓の状態、性別、年齢などによって食事制限の内容は異なり、間違った食事制限を行うと病状が悪化することもあるので、必ず主治医と相談しながら行いましょう。

運動療法

以前は、運動をすることで腎障害が悪化すると考えられていたため、慢性腎臓病の患者さまは安静が基本でした。しかし近年、適度な運動が腎機能の低下を防ぎ、透析など腎代替療法への進行を遅らせたり、死亡率を低下させることが分かっています。主治医と相談しながら、無理のない程度で運動を継続していきましょう。

腎代替療法

腎障害が進行し、腎臓がほとんど機能していない末期腎不全の状態になると、腎機能を補うために腎移植や人工透析といった腎代替療法が必要になります。機械で血液のろ過を行う血液透析は、週に3回通院し1回4~5時間程度の透析を行わなければなりません。また、腎移植は腎機能が低下した際に唯一根治が見込める治療法です。

予防法

一度腎機能が低下すると元の状態には戻らないですし、軽症でも心筋梗塞や脳卒中など命に関わる病気を招くため、早期発見・早期治療がとても大切です。慢性腎臓病は、症状のない初期段階でも尿検査・血液検査では慢性腎臓病の兆候がみられるため、定期的に健康診断を受診し下記のような異常がないかチェックしましょう。

  • 尿検査で蛋白が陽性(+)になる
  • 血液検査でクレアチニン(Cr)の値が上昇する

また、慢性腎臓病は生活習慣病とも深く関係しているため、生活習慣病の予防と同じように生活習慣を正すことが予防につながります。健康診断で生活習慣病やその疑いの指摘があった場合は、早期に治療や生活習慣の改善を行いましょう。

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