肝硬変とは
本来柔らかい臓器の肝臓が、肝炎およびアルコール依存症などが原因で起こる肝臓疾患が治癒しないまま経過が長引いた結果、肝臓が硬く小さくなり最終的に肝硬変になります。
全国では50万人ほどいる推定され、そのうちの70%の方が男性と言われています。病状が進行すると肝がん、胃食道静脈瘤、肝性脳症、浮腫・腹水、黄疸などの合併症を発生する危険性が高まります。特に、肝がんの患者さまのほとんどが肝硬変を持っていることが分かっていますので、肝硬変になる前段階での治療が重要です。
肝硬変が進行すると元の健康な肝臓には戻りません。しかし、近年では新たな抗ウイルス薬が誕生するなど治療も進歩し、肝硬変が早期発見されて原因が治癒されれば、進行を食い止めることができるようにもなってきました。また、合併症に対する治療も進歩しています。
症状
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれており、肝臓に障害が起こっても、初期段階では自覚症状がほとんどありません。ある程度進行することで以下のような症状が現れるようになります。
- 疲労
- 吐き気
- 食道静脈瘤破裂による吐血
- 食欲不振
- 下血
- 足、または足首の腫れ(浮腫)
- 皮膚のかゆみ
- 皮膚や目の黄変(黄疸)
- 腹水
- 首や前胸部、頬に赤い斑点ができる(クモ状血管腫)
- 手のひらの発赤(手掌紅班)
- 異常行動や昏睡、手の震え(肝性脳症)
- 【女性の場合】更年期に関連しない期間の欠如または喪失
- 【男性の場合】性欲喪失、乳房肥大(女性化乳房)、睾丸萎縮
原因
日本人における肝硬変の原因は肝炎ウイルス感染によるものが多く、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルスが大半を占め、その次にアルコールの過剰摂取による肝硬変が続きます。そのほかには、メタボリックシンドロームや糖尿病など生活習慣病と関係の深い非アルコール性脂肪肝炎(NASH)によるものや、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、ウィルソン病やヘモクロマトーシスなどの代謝性疾患によるものなどがあります。
治療
肝硬変の治療法は、肝障害の原因や重症度、生活環境によって異なります。治療の目的は、肝機能の悪化を食い止め、肝硬変の症状や合併症を予防または治療することです。
原因に対する治療
- 肝炎ウイルスを原因とした肝硬変に対する抗ウイルス療法
- アルコール性肝硬変に対するアルコール依存症の治療
- 非アルコール性脂肪肝疾患に対する栄養指導
など
症状・合併症に対する治療
- 浮腫や腹水に対する利尿剤や血液製剤の投与
- 感染症における予防接種や抗生物質での治療
- 肝性脳症に対して、血中アンモニアの上昇を抑えるための薬物療法
- 食道静脈瘤に対する硬化療法
- 肝がんを早期発見するための定期的な検査
などがあります。
リスクの軽減
過度な飲酒を避ける
過剰なアルコール摂取は肝硬変の危険因子です。また、肝疾患がある場合は、禁酒をしたほうが良いでしょう。
食生活の見直し
果物や野菜などの食事を摂るようにしましょう。また、脂肪分の多い食事や揚げ物の量を減らすことも大切です。その他にも、赤身の肉やレバー、シジミなど鉄分の多い食事は肝障害をさらに悪化させるため避けるようにしてください。また、1回の食事量を少なくしたり、食事を小分けにするなどをすることで、血糖値の急激な上昇を抑え、肝臓の負担を軽減させることができます。
生活習慣病の治療
メタボリックシンドロームのように、体脂肪が多いと肝臓を傷つける可能性があります。肥満を指摘された場合は減量を心がけるようにしましょう。また、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病も非アルコール性脂肪肝炎(NASH)につながりますので、しっかりと治療をすることで肝硬変になるのを食い止めることが大切です。
感染予防
C型肝炎、B型肝炎は血液や体液を介して感染するので、感染者の血液や体液に直接触れないようにしましょう。B型肝炎に関してはワクチンで予防することが可能ですので、免疫のない方はワクチン摂取をするほうが望ましいです。