悪性リンパ腫とは
まず、血液中には白血球、赤血球、血小板などの血液細胞があります。この中で本来は身体を守る働きをする白血球の1種であるリンパ球ががん細胞となり、異常に増殖する病気が悪性リンパ腫です。
初期段階で症状を自覚することが難しいため、早期発見されにくい病気のひとつとされています。
悪性リンパ腫は70種類以上
悪性リンパ腫はがん細胞の形態や性質によって70種類以上に分類(WHO分類=世界保健機構分類)されますが、大きく分けると「非ホジキンリンパ腫」、「ホジキンリンパ腫」の2種類に分けられます。日本では「非ホジキンリンパ腫」が9割以上を占めています。
「非ホジキンリンパ腫」はさらに細かく分類され、その中でも日本では「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」が最も多くみられます。
非ホジキンリンパ腫の進行について
日本人で最も多い「非ホジキンリンパ腫」は、種類によって進行の速さが異なります。
悪性度分類 | 進行の速さ | 非ホジキンリンパ腫 種類例 |
---|---|---|
低悪性度リンパ腫 | 年単位で緩やかに進行 | 濾(ろ)胞性リンパ腫、MALTリンパ腫 など |
中悪性度リンパ腫 | 週~月単位で進行 | びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 など |
高悪性度リンパ腫 | 日~週単位で急速に進行 | バーキットリンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫 など |
疫学
悪性リンパ腫は日本全国で1年間に約30,000人が診断され、増加傾向にあります。また、罹患数は男性の方が女性より少し多く、60歳ごろから増加して70歳代でピークを迎えますが、若い世代でも罹患することがあります。※
国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」より
原因
原因は明らかにはなっていませんが、ウイルス等の感染が一部のリンパ腫の原因になることがあります。また、細胞内の遺伝子に突然変異が起こり、がん遺伝子が活発化することで発症すると言われています。
症状
悪性リンパ腫の症状は病気のタイプによっても異なりますが、最も多いとされているのがリンパ節の腫れや圧迫感です。
リンパ節の腫れ(しこり)
首・わきの下・足のつけ根などリンパ節の多いところに腫れ(しこり)ができます。腫れ(しこり)はゴムのような硬さで、たいていは押しても痛みを感じることはありません。この腫れが持続的に増大していくことで全身に広がり、進行とともに全身的な症状がみられるようになります。
増大する部位によっても症状が異なり、たとえば肺に増大した場合は、胸の中に水がたまることがあります。
また、胸部や腹部リンパ節などから発症した場合、健診などで偶然に発見されることもあります。
全身症状
全身的な症状については、
- 倦怠感
- 原因不明の高熱(38℃以上)
- 食欲不振
- 原因不明の体重減少
- 激しい発汗・寝汗
- かゆみや発疹
などがみられることがあります。
悪性リンパ腫の病期(ステージ)
悪性リンパ腫の進行については、リンパ腫の広がりによって4つのステージに分類されます。治療法は病気の進行度合いによっても変わってきます。
I期 | 首やわきの下など1ヵ所のリンパ節またはリンパ組織にだけリンパ腫がある。(●部分) | |
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Ⅱ期 | 横隔膜より上または下のどちらか一方に、2ヵ所以上のリンパ節やリンパ系組織の腫れがある。(●部分) | |
Ⅲ期 | 横隔膜より上と下の両側に、リンパ節やリンパ系組織の腫れがある。(●部分) | |
Ⅳ期 | リンパ節以外の臓器(肝臓など)にリンパ腫が広がっている。(●+●部分) |
検査
まずは症状や既往歴などについて問診し、触診でリンパ節の腫れを確かめます。
また、基本的な血液検査や尿検査に加え、腫れがあるリンパ節の細胞を採取して詳しく調べる病理組織検査などを行い、診断や種類を特定します。
診断が確定した後は、治療方針を決めるため、CTやMRI、内視鏡検査、骨髄検査、さらにPET検査(陽電子放射断層撮影)などを行い、リンパ腫の広がりを詳しく調べます。
治療
治療法はリンパ腫の種類や進行度合い、患者さまの状態、予後因子(病気の治りやすさや経過の見通し)などを踏まえたうえで決定していきます。化学療法や抗体薬治療、放射線治療が主体ですが、悪性リンパ腫の種類や状態によっては経過観察で様子を見たり、造血幹細胞移植をするなど治療法も異なってきます。
また、同じ種類のリンパ腫でも病期(ステージ)や患者さまの状態などによっても治療法が異なるので、適切な病理診断と病期分類をしたうえで、一人ひとりに適した治療方針を検討します。
なお、治療を進める際は予想される副作用への対策も講じながら治療を進めていきます。
化学療法(抗がん剤治療)
悪性リンパ腫は化学療法(抗がん剤治療)の効果が高く、化学療法を主体とした治療が行われます。抗がん剤はいくつか種類があり、悪性リンパ腫の種類によって複数の抗がん剤を組み合わせて治療を行います。
放射線治療
病巣が1ヵ所で小さい場合(Ⅰ期)や早期のリンパ腫(Ⅰ期または隣接するⅡ期)などに単独で行ったり、短期間の化学療法と併用して放射線治療を行うことがあります。放射線治療にはがん細胞を死滅させたり小さくする効果があります。
抗体薬治療
リンパ腫細胞表面の抗原に対するモノクローナル抗体を抗がん剤治療と組み合わせて行います。
早期発見・早期治療のために
今のところ確実な予防方法はありませんが、他のがんと同様、早期発見・早期治療をすることがとても大切です。定期的に健康診断を受けることも早期発見につながるので、まずは健康診断をしっかりと受診するように心がけましょう。
また、最もよく見られる症状でもあるリンパ節の腫れにも注意を払うことが必要です。風邪などでもリンパ節が腫れて触ると痛みを感じることがありますが、悪性リンパ腫の場合は、痛みがなく徐々に大きくなっていく特徴があります。
このほかにも上記のような症状に気が付いたら内科の受診をおすすめします。
関連ページ
悪性リンパ腫の診療は内科(血液内科)で行いますが、発症部位や進行の度合いによって様々な臓器に症状を起こすことがあるため、血液内科以外の診療科で診断されることも少なくありません。
初診の方の予約はお取りしておりませんので、直接ご来院ください。