心筋炎・心膜炎とは
ポンプ作用を担う心臓の筋肉や、心臓を包み保護している心膜で炎症が起きることを、それぞれ心筋炎・心膜炎といいます。
原因や症状・経過は人それぞれですが、主にウイルス感染が原因とされており、風邪症状が3~5日程度続いた後、心症状を発症するケースが多くみられます。炎症によるダメージが広がり心機能が低下すると、心不全やショック状態など命に関わる危険性も高くなります。
子どもから高齢者まで年齢関係なく発症しますが、発症確率はそれほど高くないため過剰に心配する必要はありません。また、初期治療を適切に行うことができれば社会復帰率も高いため、早期発見のためにも今までの風邪症状と違いがある時などは早めの医療機関受診を心掛けましょう。
症状
心筋炎
症状や経過は人それぞれですが、先行して風邪・消化器症状が3~5日程度続いた後、心症状を発症するケースが多く見受けられます。他にも、無症状や風邪症状の段階で治癒して軽症で済む場合や、風邪症状から急激に心不全やショック状態になり突然死する場合もあります。また、心筋細胞は他の細胞と違って再生しませんので、心筋炎によってダメージが広がってしまうと心収縮機能が低下し、慢性心不全となります。
心膜炎
心膜炎の症状や経過は心筋炎とほとんど同じですが、持続性の胸痛や横になる体勢・深呼吸で胸痛が強くなることが特徴的です。炎症が悪化すると、2層の心膜の間にある心膜液が増加し心臓を圧迫する心タンポナーデや心不全などを引き起こす可能性があります。また、炎症によるダメージで心膜の伸縮性が失われ硬くなると心臓が拡張しづらくなり、心不全やむくみ、肝機能障害などを生じることがあります。
原因
発症の多くはウイルスへの感染によって起こり、風邪や胃腸炎などと同じウイルスでも発症します。その他に、
- 細菌/真菌
- 原虫/寄生虫
- アレルギー
- 膠原病など自己免疫疾患
- 心臓の手術後
- がん
- 放射線治療
- 薬の副作用
なども原因となりますが、原因の特定ができないことも珍しくありません。
検査と診断
問診や聴診によって心筋炎・心膜炎を疑う場合は、心電図検査や胸部レントゲン検査、血液検査、心臓超音波検査、心臓MRI検査などを行います。心筋梗塞など他の心疾患も可能性として考慮しつつ、複数の検査を行いながら診断と重症度の判定を行います。以上の検査でも診断できない場合は、心臓カテーテル検査で他の冠動脈疾患の可能性の排除や、直接心筋細胞や心膜の組織を採取し顕微鏡で観察する生検を行う場合もあります。
治療
現れている症状に対して治療を行う対症療法が、治療の基本となります。無症状や軽症であれば、状態の変化に気をつけながら安静にしていると1~3週間程度で治癒します。不整脈や心不全の症状がひどければ、利尿剤や強心剤など症状に合わせた薬を用いて治療を行います。また、疾患や薬の副作用など炎症の原因が特定できるようであれば、その治療も進めていきます。
炎症の程度によっては、治癒後に心機能が低下してしまう場合もありますので、注意深く経過をみていかなければいけません。慢性心不全などによって心機能低下がみられる場合は、運動療法や生活習慣の改善など一人ひとりにあわせたプログラムを実施し、社会復帰やスムーズな日常動作を目指す心臓リハビリテーションを行い、心機能の向上に取り組む場合もあります。
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