全身性エリテマトーデス(SLE)とは
全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus)とは、免疫システムの異常により、免疫細胞が自分自身の身体を攻撃してしまうことで、全身にわたってさまざまな炎症を起こす疾患です。
1週間以上発熱が続き疲れやすくなるといった症状が先行することが多く、そのあと全身の臓器に炎症を起こします。特徴的な症状でのひとつである、蝶の形をした皮膚にみられる紅斑(erythema)が、狼(ラテン語でlupus)に噛まれたあとのように赤くなることが名前の由来とされています。
また、発症した方の約8割が腎障害の合併がみられ、程度はさまざまですが、放置すると重症化する場合もあります。
患者さまの9割が女性で、特に若い女性に発症することが多く、発症年齢は20~40歳が最も多いとされており、難病の一つに指定されています。
症状
症状としては、全身症状、皮膚・粘膜症状、関節症状などがみられます。また、腎臓障害においては重大な合併症を引き起こす可能性があるので、定期的な診察が必要になります。
全身症状
- 発熱
- 倦怠感
- 易疲労感
- 食欲不振
皮膚・粘膜症状
- 蝶形紅斑
頬の両側に蝶の形をした赤い発疹(紅斑)があらわれます。 - ディスコイド疹
顔や頭部、関節背面などに1つ1つが丸い円形の発疹があらわれます。 - 光線過敏症
日光(紫外線)を浴びることで発疹があらわれたり、症状が悪化します。 - レイノー現象(手や指の変色)
- 脱毛
- 口内炎(痛みがない場合が多い)
関節症状
- 筋肉痛
- 関節の腫れと痛み
眼症状
- ドライアイ
- 充血・視覚異常
- 視力低下
臓器障害
- 心外膜炎
- 胸膜炎
- 腹痛・吐き気・下痢
- ループス腎炎
ループス腎炎について
この中でもループス腎炎は全身性エリテマトーデス(SLE)の中でも重篤な症状のひとつで、腎臓に炎症が起きた病態です。全身性エリテマトーデスと診断されていて、尿が赤くなったり(血尿)、尿が泡立ちやすくなったり(蛋白尿)、足のむくみが現れた際にはループス腎炎の可能性を疑います。
原因
全身性エリテマトーデスは原因不明の疾患と言われていますが、一卵性双生児での一致率が25%程度であることから、遺伝的要素にウイルス感染、紫外線などの環境因子が加わって発症するものと考えられています。
治療
治療の目的は寛解を目指し、疾患活動性を落ち着かせることです。また、臓器障害を防ぐことが大きな目標になります。
治療方法は臓器病変と重症度で異なりますが、基本は薬物療法です。全身の臓器にさまざまな程度で炎症を起こすことが特徴のひとつでもあることから、主体は炎症を抑える抗炎症薬です。近年は生物学的製剤が国内承認されるなど、治療薬についても進化し続けています。
非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)
発熱や関節炎などを抑えるために用いられます。
副腎皮質ステロイド薬
炎症を強力に抑えるとともに、免疫異常を是正する働きがあり、軽度から重症まで幅広く用いられます。飲み薬が基本ですが、重症のループス腎炎や精神・神経症状などを伴う場合などは入院して点滴する場合があります(ステロイドパルス療法)。
また、ステロイド薬を使用する場合は副作用の出現も懸念されるため、さまざまな検査等を通して患者さまの重症度を正確に評価したうえで、必要以上の量を投与しないよう細心の注意を払いながら治療を行います。
免疫抑制薬
副腎皮質ステロイドが効果が不十分か、副作用が強い場合は、を免疫抑制薬を追加で使うことがあります。ただし、炎症を抑える働きは強くないため、基本的にはステロイド薬と併用しながら治療を継続します。
生物学的製剤
生物学的製剤は、症状の原因として考えられている免疫細胞(B細胞)の働きを阻害する治療薬です。主に上記の治療効果が不十分な時に使用されます。
日常生活について
妊娠・出産への影響について
全身性エリテマトーデス(SLE)であるから妊娠しにくいということはありませんが、妊娠や出産に伴い、病状悪化や合併症を引き起こしやすいことが分かっています。また、服用中の薬が胎児に影響を与えることもあるので、妊娠を希望される方はご相談いただいたうえでしっかりとした計画を立てながら進めることが大切です。
紫外線対策について
全身性エリテマトーデス(SLE)の特徴的な症状のひとつに、紫外線を浴びると発疹があらわれたり、症状が悪化するといったものがあります。そのため、紫外線対策は必ず行わなければいけません。また、室内であっても紫外線は窓から侵入してくるので、窓際を避けるなど注意が必要です。
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全身性エリテマトーデス(SLE)の診療は、内科(水曜 9:00~12:00 最終受付、予約制)で行います。また、全身性エリテマトーデス(SLE)は全身に症状が出る可能性のある病気のため、各診療科と連携しながら治療をしていきます。
全身性エリテマトーデス(SLE)の診断には多くの検査が必要で、症状の内容把握には時間が必要です。そのため、全身性エリテマトーデス(SLE)の患者さまは紹介状の持参をお願いいたします。