尿路結石とは
尿路結石とは、腎臓、尿管、膀胱、尿道のいずれかに結石がある状態をいいます。日本では腎臓か尿管に結石がある上部尿路結石が9割以上を占めています。しかし、高齢の方などで排尿トラブルや慢性膀胱炎がある場合などには膀胱結石(下部尿路結石)ができることがあります。
症状
腎臓に結石がある腎結石では痛みを感じることはほとんどありませんが、尿管に結石が移動した場合には下記のような症状がみられます。
- 下腹部の痛み
- 脇腹や腰の痛み
- 血尿
- ソ径部、睾丸部痛
- 残尿感、頻尿
- 時に発熱
尿管結石による疼痛は、結石によって急に尿の流れがじゃまされることにより腎孟や尿管内の圧が上昇し壁が引っ張られることや尿管が痙攣を起こしたりすることにより生じます。
痛みの程度は、結石による閉塞の程度、閉塞の部位等により多少変わりますし、痛みの感じ方にも個人差はあります。結石が膀胱近くまで下降してくると、排尿後の残尿感がでたり、尿意が頻回になったりすることもあります。
また、尿路結石の症状とともに発熱を伴う場合には細菌感染を伴っている可能性がありますので、早急の医療機関の受診が必要です。
疫学
2005年調査の少し古いデータになりますが、尿路結石の年間罹患率は人口10万人あたり134人、生涯罹患率は男性15.1%(7人に1人)、女性6.8%(15人に1人)とされています。食生活や生活様式の欧米化、診断技術の向上、高年齢化も影響して、尿路結石の患者さまは増え続けています。
原因
生活習慣・食生活の洋風化
従来は尿路結石は中高年の男性に多い病気だといわれてきましたが、近年では若年層や女性にも増えてきています。その原因として食生活の洋風化、特に肉類など動物性タンパク質の摂取量の増加が指摘されています。肥満・糖尿病・高血圧といった生活習慣病との関連は以前から指摘されており、該当される方は注意が必要です。痛風持ち(高尿酸血症)の方は高リスクです。
薬剤
ステロイドやビタミンD製剤、尿酸排泄促進剤、ビタミンCサプリメントなどが原因になることがあります。
遺伝
シスチン尿症やキサンチン尿症、原発性高シュウ酸尿症など遺伝的要因がはっきりしているものもありますが、ほとんどの患者さまは遺伝的原因は関係ないとされています。
ただし、将来的に遺伝子解析がもっと進んできたら、これまで関係ないとされてきた遺伝子の関与も指摘される可能性はあります。家族歴のある方は少しリスクがあるかもしれません。
治療
尿路結石の治療は自然排石を待つか手術で結石を取り除くかどちらかが一般的です。
自然排石
直径が5mm以下の小さな結石は、痛みがあったとしても自然に排石される確率が高いとされています。そのため、水分摂取・運動の指導と結石排出を促進させる薬や痛み止めの薬の処方で、自然排石を待ちます。また、痛みがなく尿の流れや感染についても問題がない場合は、経過観察となる場合もあります。
自宅などで排石されて出てきた結石は、医療機関にお持ちいただくことをおすすめしています。
結石になった方のうち4~5割の方が何年かすると再発するため、原因を特定し改善することが大切です。結石の成分を調べることで、他の病気が原因となっていないかなどを特定することにも役立ちます。また、結石の形成には細菌が関わっている場合もありますので、細菌が原因となっていないか調べることも再発を予防するためには重要です。
手術
直径が10mm以上の結石や、10mm以下でも1ヶ月経っても自然排石されない結石は、腎機能に影響を与えないように、手術によって治療します。
結石に体外から衝撃波を加えて石を粉々にする「体外衝撃波砕石術(ESWL)」、尿道から結石の場所まで内視鏡を入れレーザーなどで石をこわして取り除く「経尿道的腎尿管砕石術(TUL)」、尿管を通らないほどの大きな結石は皮膚から腎臓に穴を開けて、そこから内視鏡を入れ結石を粉砕・採取する「経皮的腎砕石術(PNL)」などの方法があります。また、ごく少数の方ですが、結石の癒着などによって内視鏡手術では困難な場合、古典的な開創手術が必要になることもあります。
結石の位置、大きさ・硬さ、また患者さまの状態によってどの手術が適しているかは異なりますので、専門医と相談して治療方針を決定していきましょう。
予防について
生活習慣の改善
一番手っ取り早い方法は飲水です。水分摂取による尿の希釈は結石成分の結晶の析出を抑えます。結石になりやすい方は1日2,000ml以上の尿が出るように飲水を心がけましょう。
結石の成分としてはシュウ酸カルシウムの方が一番多いです(患者さまの約8割)。
シュウ酸を多く含む食品としてはホウレンソウなどの葉菜類、紅茶、コーヒー、お茶(とくに玉露、抹茶)、バナナ、チョコレート、ピーナッツなどが挙げられます。結石を繰り返されている患者さまは、嗜好品としてのお茶類は控えられたほうが良いかもしれません。
このほかに、肉類などの動物性蛋白や塩分の過剰摂取は結石形成のリスクを上げると言われています。
また、適度な運動をすることで結石形成のリスクも下げられます。一般的に言われているメタボにならない取り組み(過剰な栄養摂取の制限と運動)はそのまま結石予防にも有効です。
定期的な健康診断
痛みなどの自覚症状がなくても、健康診断や人間ドックでのレントゲン・CT検査・腹部エコー検査などによって結石が見つかる場合もあります。早めに結石を見つけることで適切な対処ができますので、定期的に健康診断などを受けましょう。
関連ページ
尿路結石の診療は、泌尿器科でおこないます。
腎臓や膀胱にできた結石は痛みがないため気付かず、健康診断や人間ドックでの腹部エコー検査の際に見つかることもあります。痛みが無いからといって放置していると、結石が大きくなってしまい、あとから治療をするのが大変になります。経過観察されても良いですが、必ず専門医の診断を仰いでからにしましょう。