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乳腺外科:乳がん手術や乳房形成術

日本人女性の乳がん罹患者数は年々増加しており、今では9人に1人の割合でかかると言われています。今までは閉経前後の方がかかることが多い傾向にありましたが、現在は閉経後の女性にも増加しています。また、乳がんは30代から増加するため、早めに自分の乳房に関心を持ち、日頃からチェックしていくことが大切です。

乳がんとは

乳がんとは、乳腺の組織にできる悪性腫瘍で、その多くが乳管もしくは乳管と小葉の境目の細胞から発生します。手術により腫瘍やその周辺部位を取り除きますが、他の臓器や骨、リンパ節への転移や再発の可能性もあります。

発症リスクについて

乳がんの発生には女性ホルモンの一つ、エストロゲンが関係すると言われています。そのため、食生活の欧米化による早期初経・晩期閉経化、女性の社会進出に伴う妊娠・出産経験の減少なども要因の一つだと考えられています。また、近年、乳がん罹患者のうち1割程度の方に遺伝子異常が発見されています。必ずしも異常が遺伝するわけではありませんが、通常よりも発症リスクは高くなるため、家族歴のある方は定期的な検診受診がおすすめです。

主なリスク要因(可能性段階のものも含む)

  • 閉経後の肥満
  • 出産経験がない
  • 成人期の高身長
  • 早期初経、晩期閉経
  • 飲酒習慣
  • 授乳経験がない
  • 初産年齢が遅い
  • 出生時の体重が重い
  • 乳がんの家族歴

乳がんの検査

当院の乳がん治療の主な流れは以下の通りです。

マンモグラフィやエコー検査はもちろん、手術までに病理検査や造影CT・MRIなどの画像検査を行うことで、がんの大きさや広がり、悪性度などを知り、詳細な治療方針を立てることができます。

マンモグラフィ検査

乳房専用のX線撮影装置を使った検査です。乳がんの初期症状である微細な石灰化の発見を得意としています。当院では、医師が必要と判断した方には多方向から撮影した複数のデータを立体的に表示できる3Dマンモグラフィを使用しており、2Dと比べて重なりが少ないため病変が確認しやすくなります。

エコー検査

乳房に超音波を当てて乳房内部の状態を調べる検査です。病変の有無、しこりの大きさ、腋の下など周囲のリンパ節への転移の有無などがわかります。手で感じとれない数ミリのしこりの発見を得意としており、乳腺が発達している若い世代でもしこりが見つけやすいことが特徴です。

乳房MRI検査

強い磁力を発生するMRI装置を用いて乳房の病巣を画像化し、診断する検査です。マンモグラフィーやエコー検査では判断できない場合や、病変の広がりを診断する場合などに行います。

マンモトーム生検

画像を見ながら病変部に二重構造の針を刺して組織の一部を吸引採取し、顕微鏡で調べる組織診検査です。ステレオガイド下マンモトーム生検では、当院はうつ伏せタイプの機器を導入しています。立位・座位で行うタイプに比べて体勢が楽なうえ、針がささるのが視界に入らないことで精神的苦痛の軽減にもつながります。

乳がんの治療

乳がんの治療には局所治療と全身治療があります。局所治療はがんのできている側の乳房やその周囲のリンパ節に対する治療で、「手術療法」と「放射線療法」があります。全身治療は「薬物療法」のことです。

手術療法

がんの病状や広がり、患者さまの希望をもとに術式を決定します。どの治療方法が良いということはなく、医師の説明を十分に受け、理解したうえで、納得できる治療方法を選択することが大切です。

乳房温存術

がんとその周囲の乳房を部分的に取り除き、正常な乳房を残す方法です。がんのステージが0~Ⅱ期で、さらにしこりの大きさや乳がんの位置・広がりから、切除後の整容性に満足できると予想される場合に選択できます。また、術度に放射線治療を行うことで再発を予防します。

乳房切除術(全摘術)

乳房温存術の適応にならない場合や再発が心配な方は、乳房全体を選択します。手術後は乳房の膨らみが無く、喪失感を強く感じる方もいますが、同時に乳房再建を進めることで軽減させることもできます。

薬物療法

他の臓器への転移の予防や、手術前にがんの大きさを縮小させるために行うほか、発見時に既に他の臓器に転移している場合は薬物療法が治療の主体となります。薬物療法には、大きく分けてホルモン療法・化学療法・分子標的治療の3つの治療法があります。どの治療法を行うかは、乳がんの進行度(どれだけ病状が進んでいるかを表す分類、病期、ステージとも呼びます)のみではなく乳がんの性質も考慮して決定します。

放射線療法

温存手術後の乳房内再発を予防する温存乳房への照射などの局所制御を目的に行う場合と、乳がんの転移で生じる症状をやわらげる(緩和)目的で行う場合があります。

※放射線療法が必要な場合は他の医療機関へご紹介させていただきます。

乳房再建術について

乳房再建術とは、乳がん手術により失ったり変形したりした乳房を新しくきれいに作り直すための手術です。多くの女性にとって自信を取り戻し、前向きな人生を歩むきっかけになっています。当院では、乳房再建術を行う形成外科と乳腺外科が密に連携しており、乳房再建だけでなく乳房にできる傷の処置などにも形成外科の医師が関わっています。

乳房再建方法は2種類

乳房再建は、インプラント(人工乳房)を挿入する「人工再建」、自分の身体の一部を使用する「自家組織再建」のいずれかで行います。自家組織再建と乳房切除術(全摘)をされた方の人工再建は健康保険が適用されるため、費用の面からも再建を希望される方が増えつつあります。

人工再建

シリコン製のインプラントを挿入して、膨らみを再現します。ティッシュ・エキスパンダー(皮膚拡張器)によって皮膚や周辺組織を十分に伸ばしてからインプラントに入れ替えるのが一般的です。破損や変形すると交換する必要があるなど、術後のフォローアップが必要です。

インプラント(人工乳房)

自家組織再建

自分の腹部または背部から、皮膚を一部移植することで再建を行います。人工再建に比べて自然な乳房を作りやすいのですが、腹部や背部に大きな傷ができたり、筋力が低下したりするなどの問題もあります。また、乳がんが再発した際は再建した乳房を取り除く必要があります。

乳房再建のタイミングと流れ

乳がん手術と同時に乳房再建を行うことを「一次同時再建」、手術から一定期間経過してから行う場合は「二次再建」と呼びます。乳がん宣告後は、すぐに再建まで考えられない方も多いため、落ち着いた時に考え始めるなど、再建を始めるタイミングは人それぞれです。

乳房再建の主な流れ

一人ひとりの希望を叶えるために

乳房や見た目への想いは人それぞれです。患者さまの細やかな希望にも応えられるように、当院では乳輪・乳頭の再建手術や装着するタイプの人工乳頭、MRI検査も可能なメディカルタトゥーなどの提案も行っています。

セカンドオピニオンについて

セカンドオピニオンとは、患者さまとそのご家族が納得のいく治療方法を選択することができるように、現在診療を担当している医師とは異なる医療機関の医師に、治療の説明や今後の治療選択などについて「第2の意見」を求めることです。

当院での検査結果や主治医の治療方針など、客観的な情報を得た他医療機関の医師の意見を聞くことで、治療の選択の幅が広がったり、現在の治療方針に対する理解が深まったりして、より納得して治療に臨むことができます。

当院で治療されている方

主治医や各診療科のスタッフへご相談ください。

他医療機関で治療されている方

当院の医師にセカンドオピニオンを希望される場合は、地域サポートセンターまでお問い合わせください。

■地域サポートセンター(直通)
TEL.076-461-7730 FAX.076-461-7744
※上記の直通番号がつながらない場合は代表電話(TEL:076-461-7700)にご連絡ください。