当院で行う手術療法
小さな傷での手術
当院では、温存術のみでなく、乳房切除術においても可能な限り小さな傷での手術を行っています。金沢医科大学乳腺内分泌外科教授の野口昌邦先生(元乳がん学会会長)と共同開発した、moving window法(金沢大学医学部乳腺外科でも採用)を用い、乳房内のすべての領域の乳がんでも、乳輪の際(きわ)の傷のみで病変部を切除します。
また、再建手術においても、乳輪の際の傷で全乳腺を切除し、切除した乳腺を取り出す傷は、乳房の一番外側、正面からは見えない場所で、かつ、ブラジャーに隠れる高さにおき、術後の傷が目立たないよう努力しています。
センチネルリンパ節生検
乳がんの術後の後遺症である上肢のリンパ浮腫を予防するために行う検査兼手術で、温存術でも乳房切除術でも施行します。
乳がんは、まず、腋のリンパ節に転移を起こすことが多く、その転移状況が術後の再発リスクの予測因子であり、術後の薬物療法を選択する上での重要な情報になります。よって、かつては腋のリンパ節に転移があるか、また、転移があった場合、転移したリンパ節の個数はいくつかといった情報を得るため、腋のリンパ節を広く切除する、腋窩リンパ節郭清といわれる手術が行われていました。しかし、この手術の後遺症で、腕が象のようにはれてしまうリンパ浮腫といわれる後遺症が高率に発生していました。
センチネルリンパ節生検とは、がんが最初に転移するといわれているセンチネル(「見張り」という意味)リンパ節を手術中に確認し、それのみをまず切除し、手術中に転移の有無を確認する手術です。転移がなければ、リンパ節の切除は1個のみで済み、リンパ浮腫の心配がなくなります。
当院では、手術前にCT検査でセンチネルリンパ節を同定しているため、手術の傷は腋に1~2cmと非常に小さくすることができます。また、センチネルリンパ節生検の成功率も99.5%です。