整形外科:人工関節置換術とロボット支援手術
膝の骨や軟骨のすり減りが原因で痛みが生じる「変形性膝関節症」。
根本治療としての「人工膝関節置換術」は、元来、医師の経験が頼りとなる高度な手術です。手術を受ける患者さまの多くはご高齢の方です。強い痛みで歩行困難でも、多くの方が治療により運動機能が回復する可能性があります。前向きな生活を取りもどして、結果的に介護予防につながる例も増えてきました。
当院では、医師をサポートし、手術のさらなる精度向上を可能にする「手術支援ロボット」の活用を進めています。医師の経験にロボットの数値化技術を加えることで、手術の質を高め、患者さまの生活向上につなげます。
軟骨がすり減り、痛みが生じる「変形性膝関節症」
変形性膝関節症は、加齢などにより膝の軟組織が損傷して骨と骨が直接ぶつかり、強い痛みが生じる病気です。症状が進行すると、膝の内側と外側の靭帯のバランスが崩れて歩行困難になる場合もあります。膝の健康を損なうことにより、要介護状態に進む原因としても無視できません。
痛みを根本から取り除く「人工膝関節置換術」
治療の第一歩は、投薬や関節注射、生活指導、リハビリテーションによる「保存療法」が原則ですが、改善しない場合は、傷んで変形した骨を切除し、金属やポリエチレン製の人工関節に置き換える「手術療法」を検討します。
医師をサポートする手術支援ロボット
当院は、2023年8月に人工関節手術支援ロボット「ROSA Knee(ロザ・ニー)」を導入しました。
人工膝関節置換術は、長年の実績により治療成績の安定した手術ですが、骨の切除量や人工関節の設置位置の判断は、医師の経験に頼ってきました。ロボットを活用することで、リアルタイムで骨の切除量を数値化でき、ロボットアームのガイドにより、さらに精密で個別性の高い手術を行うことが可能になりました。
評価計測で一人ひとりに最適化
手術では、医師が膝の内部を確認し、骨の切除量の微調整を行う必要があります。ロボットを活用した手術では、微調整の際もリアルタイムで評価計測し、一人ひとりに適した設定を行うことができます。
医師の経験を数値化・精密にガイド
ロボットの評価計測やガイドは、いずれも0.5mm/0.5°レベルと高精度です。これまで医師の経験に頼っていた部分を数値化することにより、限られた時間内で、さらに精密に骨を切除することができます。
より精密で個別性の高い手術
人工膝関節置換術では、骨と人工関節をいかに正確につなぐかが「手術の質」を決定します。そのため、接合面をつくる骨の切除は、手術工程のなかでも特に重要です。ロボットの最大の特徴は、骨の切除量だけでなく、靭帯の緊張をも数値化する機能です。数値化により、さらに精密で個別性の高い手術を行えることは、術後の人工関節のゆるみ防止や感染症リスクの低減にもつながり、回復後の患者さまの「生活の質」向上に大きく寄与しているといえます。