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泌尿器科:前立腺肥大症 低侵襲治療CVP

前立腺肥大症とは

まず、前立腺は男性にだけある生殖器で、尿道を取り巻くように存在しています。前立腺肥大症とは、加齢やホルモンバランスの崩れなどの影響によって肥大した前立腺が尿道を圧迫し、尿が出にくくなるなどといった「尿トラブル」が現れる病気で、50歳以上の男性に多くみられ、その数は5人に1人と言われています。前立腺肥大症そのものは良性腫瘍のため命の危険はありませんが、長時間放置すると膀胱が壊れたり腎臓が悪くなることもあるので、早期に治療を開始することが大切です。

症状

前立腺肥大症になると、以下のような排尿症状、排尿後症状、畜尿症状など、さまざまな症状が現れるようになります。

  • 尿が出にくい
  • 尿が出きらない
  • 尿の勢いが弱い
  • 排尿時にお腹の力を要する
  • 頻尿
  • 夜何度もトイレに起きる
  • 急に尿意を催し我慢できない(尿意切迫)
  • 残尿感

また、前立腺肥大症が悪化すると、尿道が完全にふさがって尿が出なくなったり、腎臓にも悪影響を及ぼす場合があるので注意が必要です。

疫学

50歳以上の男性の5人に1人が前立腺肥大に罹患するといわれています。
大きくなるのは、60歳で6割、70歳で7割の方といわれています。

男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン(日本泌尿器科学会)より

原因

原因は完全に明らかにはなっていませんが、加齢やホルモンバランスの崩れ(テストステロン/エストロゲン比の低下)、慢性炎症、遺伝、肥満や糖尿病などが考えられています。

治療

治療には薬物療法、手術などがあります。まずは薬物療法で治療をする場合が多いですが、重症の場合は早期に手術を行った方が、排尿の悩みや通院の手間から解放されるなどといったメリットが大きい場合もあります。

薬物療法

前立腺を小さくする薬や排尿障害を改善させる薬など、前立腺の大きさや症状に合わせた薬による治療を行います。

手術

症状が重い場合や薬による治療を行っても効果が不十分な場合は、手術療法を検討します。当院では、従来からのTUR-P(TURis)に加え、2018年 CVP(接触式レーザー手術)、2020年 CVP(XCAVATOR)、2023年にはRezumシステムを用いたWAVE治療(経尿道的水蒸気治療)を導入し、前立腺肥大症への治療を積極的に行っています。

経尿道的水蒸気治療(WAVE)接触式レーザー前立腺蒸散術(CVP)経尿道的切除術(TUR-P)
水蒸気の熱を利用して前立腺を退縮させる手術レーザーを前立腺に照射して気化させ消失させる手術電気メスを用いて少しずつ前立腺を削り取る手術

接触式レーザー前立腺蒸散術(CVP)

肥大した前立腺にレーザーファイバーを接触させ、レーザー光を照射することで、前立腺組織中の水分や血液を一瞬で蒸発させ、腫大した組織を気化・消失させる治療法です。平均的な入院日数は4、5日で、2016年から保険適用となっています。

特長

  • 出血が非常に少ない
  • 心臓や脳血管の病気で血液を固まりにくくする薬(抗血栓薬、抗凝固薬)を服用中でも手術が可能
  • 低侵襲のため早期の社会復帰が可能
  • (前立腺の大きさにもよりますが)平均手術時間は1~1.5時間程度
  • 尿失禁を起こす可能性がほとんどない
  • 術後の尿勢が良い

XCAVATORファイバーの導入

従来のファイバー(レーザー照射の先端部)に加え、2020年より当院ではXCAVATORファイバーを導入しています。XCAVATORはヘッドが大きいため照射面積が広く、蒸散効率が高いため、前立腺が大きく従来のファイバーではCVPが行えなかった症例に対してもCVPを適用させることができるようになりました。

XCAVATOR

経尿道的水蒸気治療(WAVE)

経尿道的水蒸気治療(WAVE)とは、Rezum(レジューム)システムを使用して103℃の水蒸気を9秒間噴霧し、前立腺組織を約70℃まで上昇させることで、徐々に肥大組織を縮小させる治療です。日本では、2022年9月に保険適応となった新しい前立腺肥大治療です。

手術時間は10分程度と短時間であり、身体に負担をかけずに効果的な治療をすることが可能です。患者さまによって差がありますが、術後1〜3ヶ月程度で効果が発揮されます。

特徴

  • 手術時間が早い(10分程度)
    ※日帰りでの治療も可能ですが、麻酔をしているため、基本的には1泊2日でお願いしています
  • 抗血栓薬、抗凝固薬内服中でも手術が可能
  • 前立腺部尿道の粘膜は切除しないので自然な回復が予想される
  • 排尿状態の改善は水蒸気による熱治療の後の回復なのでやや時間がかかる(1~3カ月)
  • 術後の性機能の温存に関して安定した成績
  • 保険適応に関しては、まだ全身合併症があり通常の手術が困難と予想される方等の制限がある

日常生活での注意点

日常生活においては、前立腺肥大症による排尿トラブルを悪化させないように心がけることが大切です。

  • 車の運転など、長時間同じ座った姿勢をとらない
  • 尿を我慢しない
  • 軽い体操や散歩など適度な運動を心がける
  • 過剰な水分を控え、適度な水分をとる。就寝後トイレに起きる方は、夕方以降の水分を控える
  • アルコールの飲みすぎや夕食後のコーヒーを避ける
  • 刺激の強い食品は避ける
  • 下半身を冷やさないようにする
  • 便秘にならないような生活習慣を心がける

通常の健康診断では、前立腺の検査項目は基本含まれていません。前立腺には良性腫瘍である前立腺肥大症だけでなく、悪性腫瘍のがんも発生する恐れがあるため、50歳以上の方は1年または2年ごとに健康診断オプション選択でPSA検査をすることをおすすめします。

関連情報

前立腺肥大症の診療は、泌尿器科でおこないます。
問診や血液検査、超音波検査、尿流量測定などの検査を通して前立腺肥大症かどうかを診断します。