症例一覧
そけいヘルニアと内視鏡手術について

そけいヘルニアとは

「ヘルニア」とは、体の組織(内臓など)が正常な位置からはみ出している状態を指します。これが鼠径部(脚の付け根)に生じたものが「そけいヘルニア」です。(いわゆる「脱腸」のこと)
体の表面では足の付け根あたりがポッコリと膨らんで見えます。これは、腹部の筋肉が弱くなったり、筋肉のつなぎ目が緩んだりすることで鼠径部の筋膜に隙間が生じて穴が開き、腸などの内臓が腹膜ごと皮膚の下で飛び出してしまう病気です。
また、立っている時は重力で腹部の内臓が下がるため膨らみが大きくなりますが、仰向けで横になった状態では、一時的に内臓がもとの位置に戻って表面上何もないように見えます。

初期は小さな膨らみから始まり、少しずつ大きくなりながら下降して、男性の場合、最終的には陰嚢(いんのう)まで膨らむことがあります。 放置すると膨らみが硬くなり元に戻らない「嵌頓(かんとん)」状態に進行する場合があり、緊急手術が必要となる可能性があります。自己判断せず早めに受診することが大切です。

そけいヘルニアは3種類

そけいヘルニアには大きく3種類があります。

  1. 外鼠径ヘルニア
    鼠径部の外側に生じるタイプ。そけいヘルニアで一番多く見られる

症状

  • 下腹部に不快感や違和感がある
  • 内臓(胃)が引っ張られる感覚がある
  • 立った時に脚の付け根や陰嚢が膨らむ
  • 膨らみが飛び出したり引っ込んだりする
  • 膨らみが急に硬くなり元に戻らない(嵌頓)

原因

加齢(特に40歳以上)や妊娠等により腹部の筋肉が弱くなっている方のほか、格闘技など過激な運動を行う方、お腹に力のかかる仕事や立ち仕事に従事する方に多く見られます。
また、便秘症や肥満症、喘息や慢性肺疾患(いきみや咳などにより腹圧がかかりやすい)などの疾患が遠因となることもあります。

治療

そけいヘルニアは、自然に治ることはありません。また、投薬による治療方法がないため、外科手術によって皮膚の下に出ている腹膜や腸を元に戻すことが治療の基本となります。
当院では、主に腹腔鏡手術による治療を行っています。

腹腔鏡手術(TAPP法、TEP法)

腹部に3~10mmほどの小さな穴を1~3か所開け、細い管の先端にカメラや鉗子が付いた手術器具(腹腔鏡)を用いて行う手術です。
お腹のなかの映像をモニターで見ながら、筋膜の弱くなった部分を覆うようにポリプロピレン製のメッシュを挿入し、ヘルニアの穴を内側から補強します。

腹腔鏡手術の特徴

  • 手術時間は1時間~1時間30分程度
  • 傷が小さく、術後の痛みが少ない
  • 術後合併症のひとつである慢性疼痛が少ない
  • 両側にそけいヘルニアが生じている場合も同時に治療が可能
  • 稀にある隠れた別のそけいヘルニアを見つけやすい

日常生活への復帰

目安として、術後翌日から歩行や入浴が可能です。また、1~2週間後には軽い運動ができる程度、3週間~1か月後には力仕事が可能な程度までの回復を見込むことができます。

手術をした箇所は、半年間ほどつっぱり感が残ることがありますが、通常1年間程度で徐々に回復していきます。なるべく下腹部に力がかからないようにし、野菜や水分を積極的にとることで便秘にならないよう注意してください。

なお、回復には個人差があるため、術後の生活については医師の指示に従ってください。また、気になる症状が続く場合は、速やかに受診してください。

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