当院の取り組みについて

「人工膝関節置換術」―手術支援ロボットの数値化技術を活用した治療

膝の骨や軟骨のすり減りが原因で痛みが生じる「変形性膝関節症」。
根本治療としての「人工膝関節置換術」は、元来、医師の経験が頼りとなる高度な手術です。手術を受ける患者さんの多くはご高齢の方です。強い痛みで歩行困難でも、多くの方が治療により運動機能が回復する可能性があります。前向きな生活を取りもどして、結果的に介護予防につながる例も増えてきました。
当院では、医師をサポートし、手術のさらなる精度向上を可能にする「手術支援ロボット」の活用を進めています。医師の経験にロボットの数値化技術を加えることで、手術の質を高め、患者さんの生活向上につなげます。

1)軟骨がすり減り、痛みが生じる「変形性膝関節症」

2)痛みを根本から取り除く「人工膝関節置換術」

3)骨と靭帯のバランスを再建

4)医師をサポートする手術支援ロボット

5)一貫性ある治療のために

軟骨がすり減り、痛みが生じる「変形性膝関節症」

変形性膝関節症は、加齢などにより膝の軟組織が損傷して骨と骨が直接ぶつかり、強い痛みが生じる病気です。症状が進行すると、膝の内側と外側の靭帯のバランスが崩れて歩行困難になる場合もあります。膝の健康を損なうことにより、要介護状態に進む原因としても無視できません。

痛みを根本から取り除く「人工膝関節置換術」

治療の第一歩は、投薬や関節注射、生活指導、リハビリテーションによる「保存療法」が原則ですが、改善しない場合は、傷んで変形した骨を切除し、金属やポリエチレン製の人工関節に置き換える「手術療法」を検討します。

金属・ポリエチレン製の人工関節に置換(手術療法)

骨と靭帯のバランスを再建

治療の柱は、脚全体の骨と靭帯のバランス(アライメント)を再建することです。手術では、傷んだ骨を切除するだけでなく、膝の内側と外側の靭帯の緊張バランスを見極め、踏ん張りがきく正常な状態に調整します。

患者さんごとに関節の機能を十分に発揮できるバランスを考え、適切な位置に人工関節を入れるため、事前に骨を切除する角度や量を綿密に計画します。計画の検討には、医師の経験が求められます。

医師をサポートする手術支援ロボット

当院は、2023年8月に人工関節手術支援ロボット「ROSA Knee(ロザ・ニー)」を導入しました。
人工膝関節置換術は、長年の実績により治療成績の安定した手術ですが、骨の切除量や人工関節の設置位置の判断は、医師の経験に頼ってきました。ロボットを活用することで、リアルタイムで骨の切除量を数値化でき、ロボットアームのガイドにより、さらに精密で個別性の高い手術を行うことが可能になりました。

評価計測で一人ひとりに最適化

手術では、医師が膝の内部を確認し、骨の切除量の微調整を行う必要があります。ロボットを活用した手術では、微調整の際もリアルタイムで評価計測し、一人ひとりに適した設定を行うことができます。

医師の経験を数値化・精密にガイド

ロボットの評価計測やガイドは、いずれも0.5mm/0.5°レベルと高精度です。これまで医師の経験に頼っていた部分を数値化することにより、限られた時間内で、さらに精密に骨を切除することができます。

より精密で個別性の高い手術

人工膝関節置換術では、骨と人工関節をいかに正確につなぐかが「手術の質」を決定します。そのため、接合面をつくる骨の切除は、手術工程のなかでも特に重要です。ロボットの最大の特徴は、骨の切除量だけでなく、靭帯の緊張をも数値化する機能です。数値化により、さらに精密で個別性の高い手術を行えることは、術後の人工関節のゆるみ防止や感染症リスクの低減にもつながり、回復後の患者さんの「生活の質」向上に大きく寄与しているといえます。

一貫性ある治療のために

人工膝関節置換術では、術中だけでなく、術前・術後を通じて一貫した治療を行うことが大切です。ロボットの活用で手術の精度が向上することはもちろん、医師、看護師、理学療法士などさまざまなスタッフが連携し、患者さん一人ひとりの治療と回復を切れ目なくサポートします。

術前

1.日常生活動作の術前評価

理学療法士が患者さんと痛みの程度や歩行など日常生活動作の状況を確認し、事前評価します。

2.推奨値の算出・手術計画の策定

下肢画像を外部計測機関へ送り、骨の切除量(長さや角度)の推奨値を算出します。その後、医師が、診察の所見や画像、理学療法士の事前評価、外部計測機関の推奨値を総合的に判断し、人工関節を設置する位置や骨の切除量等を決定します。

術中

3.ロボットへの数値設定

手術計画の数値をロボットに設定し、指標となる骨の位置を座標登録すると、計画数値と実際の切除の差がモニターに数値化されます。

4.骨や靭帯の状態を直接確認

医師が切開した膝の内部を目視。患者さんの膝を慎重に動かして骨や靭帯の状態を直接確認します。

5.最もバランスが整う位置を探る

モニターの数値や膝の内部の様子、医師の手の感覚を総合して、膝の外側と内側の靭帯のバランスが最も整う位置を探り、その場でロボットの数値設定を微調整します。

6.骨を切除し人工関節を設置

ロボットアームのガイドを頼りに精密に骨を切除し、所定の位置に人工関節を設置します。モニターの数値を参考に不具合が生じていないかなどを確認し、縫合します。

術後

7.前後比較とリハビリテーションメニューの検討

手術後、理学療法士が再度、日常生活動作について術後評価します。どのように症状が改善したかを一つひとつ患者さんと確認。医師と連携して一人ひとりに適したリハビリテーションメニューを検討します。

8.段階に応じた継続的なリハビリテーション

膝の手術に係るリハビリテーションは術前から始まり、①手術翌日~1週間程度、②1週間~2週間程度、③2週間以降~と、段階に応じたメニューに取り組みながら、日常生活への復帰をめざします。

手術支援ロボット導入に伴う院内向けの勉強会

整形外科の医師が、人工膝関節置換術に関する概要説明とロボットの操作デモンストレーションを行い、若手医師や理学療法士をはじめ、普段、直接治療やリハビリに携わることがないスタッフに至るまで幅広い職種が参加。医師の補助のもと、実機を用いて膝関節模型の切除を体験し、手術支援ロボットの有用性について理解を深めました。

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