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医療・健康情報

前立腺肥大症について

医療・健康情報,泌尿器科2019.10.15

前立腺肥大症とは

まず、前立腺は男性にだけある生殖器で、尿道を取り巻くように存在しています。前立腺肥大症とは、加齢やホルモンバランスの崩れなどの影響によって肥大した前立腺が尿道を圧迫し、尿が出にくくなるなどといった「尿トラブル」が現れる病気で、50歳以上の男性に多くみられ、その数は5人に1人と言われています。前立腺肥大症そのものは良性腫瘍のため命の危険はありませんが、長時間放置すると膀胱が壊れたり腎臓が悪くなることもあるので、早期に治療を開始することが大切です。

症状

前立腺肥大症になると、以下のような排尿症状、排尿後症状、畜尿症状など、さまざまな症状が現れるようになります。

  • 尿が出にくい
  • 尿が出きらない
  • 尿の勢いが弱い
  • 排尿時にお腹の力を要する
  • 頻尿
  • 夜何度もトイレに起きる
  • 急に尿意を催し我慢できない(尿意切迫)
  • 残尿感

また、前立腺肥大症が悪化すると、尿道が完全にふさがって尿が出なくなったり、腎臓にも悪影響を及ぼす場合があるので注意が必要です。

疫学

50歳以上の男性の5人に1人が前立腺肥大に罹患するといわれています。※1
大きくなるのは、60歳で6割、70歳で7割の方といわれています。
※1 男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン(日本泌尿器科学会)より

原因

原因は完全に明らかにはなっていませんが、加齢やホルモンバランスの崩れ(テストステロン/エストロゲン比の低下)、慢性炎症、遺伝、肥満や糖尿病などが考えられています。

診療科

前立腺肥大症の診療は、泌尿器科でおこないます。
問診や血液検査、超音波検査、尿流量測定などの検査を通して前立腺肥大症かどうかを診断します。

診療科
泌尿器科※初診の方の予約はお取りしておりませんので、直接ご来院ください。
診療担当表

治療

治療には薬物療法、手術などがあります。まずは薬物療法で治療をする場合が多いですが、重症の場合は早期に手術を行った方が、排尿の悩みや通院の手間から解放されるなどといったメリットが大きい場合もあります。

薬物療法

前立腺を小さくする薬や排尿障害を改善させる薬など、前立腺の大きさや症状に合わせた薬による治療を行います。

手術

症状が重い場合や薬による治療を行っても効果が不十分な場合は、手術療法を検討します。前立腺肥大症の代表的な内視鏡手術には大きく分けて3種類あります。欧米では手術の安全性、低侵襲性から接触式レーザー前立腺蒸散術(CVP)が主流となっており、当院でも接触式レーザー前立腺レーザー蒸散術(CVP)による手術を採用しています。

接触式レーザー前立腺蒸散術

(CVP)

 レーザー核出術
(HoLEP)
経尿道的切除術
(TUR-P)
 レーザーを前立腺に照射して気化させ消失する手術  レーザーを用いて前立腺を切り抜く手術  電気メスを用いて少しずつ前立腺を削り取る手術
接触式レーザー前立腺蒸散術(CVP)の特長
  • 出血が非常に少ない
  • 心臓や脳血管の病気で血液を固まりにくくする薬(抗血栓薬、抗凝固薬)を服用中でも手術が可能
  • 低侵襲のため早期の社会復帰が可能
  • (前立腺の大きさにもよりますが)平均手術時間は1時間程度
  • 尿失禁を起こす可能性がほとんどない
  • 男性機能の低下が少ない

などが挙げられます。また、平均的な入院日数は4、5日で、2016年から保険適用となっています。

日常生活での注意点

日常生活においては、前立腺肥大症による排尿トラブルを悪化させないように心がけることが大切です。

  • 車の運転など、長時間同じ座った姿勢をとらない
  • 尿を我慢しない
  • 軽い体操や散歩など適度な運動を心がける
  • 過剰な水分を控え、適度な水分をとる。就寝後トイレに起きる方は、夕方以降の水分を控える
  • アルコールの飲みすぎや夕食後のコーヒーを避ける
  • 刺激の強い食品は避ける
  • 下半身を冷やさないようにする
  • 便秘にならないような生活習慣を心がける
通常の健康診断では、前立腺の検査項目は基本含まれていません。前立腺には良性腫瘍である前立腺肥大症だけでなく、悪性腫瘍のがんも発生する恐れがあるため、50歳以上の方は1年または2年ごとに健康診断オプション選択でPSA検査をすることをおすすめします。

教えてくれた医師

長澤 丞志
【泌尿器科】