肛門にいぼ状の腫れができる「痔核(いぼ痔)」の治療において、当院では硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸(ALTA)による注射療法を行っています。従来の切除手術に比べて痛みや出血が少ないため精神的・身体的にも負担の少ない治療法であり、日帰りでの治療が可能です。痔でお困りの方や手術への不安がある方は、ぜひ専門医にご相談ください。
痔にはさまざまな種類があり、主に「痔核(いぼ痔)」、「痔ろう(あな痔)」、「裂肛(切れ痔)」の3種類に分類されます。内痔核硬化療法は、痔核(いぼ痔)のなかでも歯状線の内側にできる内痔核にのみ有効な治療法で、外側にできる外痔核には効果はありません。
内痔核は知覚神経のない直腸にできるため、発症初期は痛みを感じません。病状が進行すると、排便時の出血やいぼが肛門から飛び出た状態(脱出)による炎症や痛み、かゆみなどの症状が現れます。下表の通り、内痔核は進行レベルで4段階に分類されますが、硬化療法はⅡ度~Ⅳ度の方に適応可能なため、薬物療法で長期的に通院治療している方から手術を避けたい方など、多様なニーズに対応できます。
内痔核Ⅰ度 | 排便時に出血はあるが痛みはなくいぼ痔も肛門の外に出ない。 (出血はトイレットペーパーにつく程度から便器が赤くなる場合まであり。) |
内痔核Ⅱ度 | 排便時、いぼ痔が肛門の外に出てくるが、排便後は自然と元に戻る状態。痛みや残便感を感じる時がある。 |
内痔核Ⅲ度 | (排便時)、いぼ痔が肛門の外に出て、指で押し込まないと戻らない。出血も多く、しばしば腫れや強い痛みを感じる。 |
内痔核Ⅳ度 | いぼ痔が肛門の外に出たままで、指で押しても戻らない。腫れや激しい痛みを感じる。 |
内痔核の治療は、進行レベルがⅠ度程度であれば生活習慣の改善や軟膏・坐薬など外用薬で治療できますが、進行した場合は手術による治療が一般的です。
痔核の根治療法のなかでも、最も一般的に行われている手術です。再発率が低く、さまざまな痔核に柔軟に対応できるため、現在も痔核治療の主流となっています。手術では痔核の根元を糸で縛り血流を遮断して切除しますが、術後の出血や痛みなどのリスクがあり、経過観察のために数日間の入院が必要です。
内痔核硬化療法は、内痔核を切除することなく治療できる注射療法です。専用の薬剤を内痔核内に注射することで、痔核に流れ込む血液の量を減らし、痔核を固めて粘膜に癒着・固定させます。内痔核は知覚神経のない直腸にできるため注射してもほとんど痛みを感じませんし、切除しないことで出血や痛みのリスクが少なくなるため、低侵襲かつ日帰りで治療を行えます。ただし、再発の可能性が1割程度あるため、何度も再発する場合は切除を選択する場合もあります。
ひとつの痔核に対して4カ所に分割して注射し、薬剤を痔核全体に行きわたらせます。
治療で行う4段階注射法は難度の高い手技のため、痔の治療経験が豊富で定められた講習を修了した医師のみ実施できます。また、治療で使用する薬剤は尿とともに体外に排出されますが、薬剤の特性上、透析治療を受けている方や子ども、妊婦、授乳中の方などには使用できません。
実際に当院で行っている治療の流れ1例をご紹介します。
12:00 来院
体調確認をして、点滴を行います。
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13:30 治療開始
肛門鏡で内痔核を直接観察しながら注射を行います。薬液の注入時に痛みを感じる場合があります。治療は20~30分程度で終了します。
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14:00 経過観察
治療後、経過観察のため2時間程度ベッドで休みます。
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16:00 帰宅
治療翌日と翌週に受診し、経過を確認します。しばらくは激しい運動を避け、安静に過ごしましょう。
内痔核硬化療法には健康保険が適用されます。痔の状態にもよりますが、再診料なども含めて、通常は3割負担の方で約15,000円、1割負担の方で約5,000円程度となります。
診療科によって休診の場合があります。事前に診療担当表をご確認ください。
ご予約のお問合せは10:00以降(乳腺外科、婦人科、眼科は月~金曜13:00以降、土曜10:00以降)にお願いいたします。
■「婦人科、乳腺外科、小児科、形成外科」は初めての方でもWebから予約ができます。
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